「なぜ危惧するのか?日本の原発に地震ダメージが及ぼす重要なリスク」ヘラルド・トリビューン/朝日新聞 2007年08月11日付


http://www.japanfocus.org/-Ishibashi-Katsuhiko/2495

石橋克彦

私は中越地方新潟県の柏崎が大きな地震に見舞われる危険、そして原発全般の基本的な脆弱性について警告してきました。

(2007年)7月16日のマグニチュード6.8の地震は東電が運営する柏崎刈羽原発に相当な損傷を与えたことによって私の憂いは現実のものとなりました。

過去40年に渡って日本が原発を建造してきた間、幸か不幸か日本の地震活動は比較的落ち着いていました。大きな震災に見舞われた原発は一基もありませんでした。政府は、電力産業企業や大学研究者のコミュニティと共に、大震災がもたらす潜在的なリスクを過小評価する習慣を育ててしまいました。

しかし1995年に神戸を破壊した阪神大震災が起こってからは、日本列島全体の地震活動が活性化しました。

過去2年間(2005〜2007)において、大きな地震が三つの原発の近隣で起こりました。宮城県の女川原発(2005年8月)、石川県の志賀原発(2007年3月)、そして今回の(新潟県の)柏崎刈羽原発です。それぞれのケースで震災が起こした最大の地殻変動量はそれらの原発の耐震設計が想定していた値を上回りました。柏崎の近隣で起こった最後の地震は最大993galの地動加速度を記録しましたが、原発の設計上の想定値は450galです。

柏崎刈羽原発の位置

地震が頻発する日本のような国でこれだけ多くの原発を建造する場合、このような危険な状況は頻繁に起こりうるのです。現在、日本には原発が55基稼働しています。

柏崎刈羽原発で起こった事は「想定外」という言葉で表現されてはなりません。

柏崎刈羽では実際に起こったよりも遥かに酷い状況となる可能性がありました。もしも震源地があと少し南西寄り(つまり原発に近く)、マグニチュードが7.5だったならば(1964年に新潟県で起こった地震と同規模)、そして7基のリアクターが全て稼働中であったならば、地震とメルトダウンが併発していた可能性があります。

柏崎刈羽原発

そのような事が起きていれば、震災による被害に加えて原発からの放射線漏れが互いに増幅しあうような惨劇となっていたはずです。

現在私たちが生きている地震の活性期は後40年強続きます。もしも原発の脆弱性に対する抜本的な方策が取られないならば、日本は近い未来のうちに本当の原子力の悲劇を経験するでしょう。

このような悪夢のリスクが特に高いのが静岡県の浜岡原発、そして福井県は若狭湾にある原発のクラスターです。これらの原発が深刻な事故を起こした場合、東京、名古屋、大阪の三つの大都市圏に甚大な被害がもたらされるでしょう。

日本の原発分布図 (2006)

最近の地震は旧い耐震設計指針の致命的な弱点を浮き彫りにしました。

しかし28年ぶりの刷新となる昨年9月から採用された新しいガイドラインでさえ地震による「地動」を過小評価する点において深刻な欠陥を持っていると言わざるを得ません。

私はこの新しい耐震設計ガイドラインの構築のための専門家の審議会に名を連ねていましたが、この問題に対する審議会の態度に抗議し、作業の最終段階が行われていた昨年の8月に辞任しました。この欠陥は柏崎刈羽原発で起こったことから教訓を学び、早急に改善されなければなりません。

東電はこの原発の近くに位置する海底の活断層を十分に考慮していないことで批判されてきました。多くの専門家が新ガイドラインに添った緻密な地震学調査を行えばこのような過失は将来起こらないだろうと主張していますが、どんなに現在の技術を集結した完璧な地震学調査を行ったとしても発見することのできない活断層ラインをマグニチュード7.3級の地震が直撃する可能性は存在するのです。

こうした理由によって、新ガイドラインは、日本のどこに原発を建造しようと、少なくともマグニチュード7.3クラスの地震が引き起こす地動加速度、約1000galに耐えうる設計を規定すべきなのです。しかし新ガイドラインは約450galしか規定していません。

この値は大幅に引き上げられるべきです。そして全ての現存する原発はその改訂に基づいて徹底的に検査されるべきです。この改定値を達することのできない原発は稼働停止するべきでしょう。

最も深刻な事実は新ガイドラインが欠陥をはらんでいることに加えて、このガイドラインを実行するシステムが滅茶苦茶であることです。この柏崎刈羽原発近くの活断層の過小評価の責任の大部分は東電の原発設計の粗悪な検査がこの問題を見逃してたことにあります。

去年9月16日の朝日新聞のコラムで私は島根県の島根原発の設計プロセスにおいて活断層ラインの存在が見落とされていたことを指摘しました。これは安全検査上の重大な過誤です。しかしその問題に対して何のアクションも取られませんでした。これは原子力安全を担う機関の無責任さを証明しています。この時電力会社にアドバイスを行い、安全検査のメンバーでもあった専門家―つまり活断層ラインの過小評価の責任を取るべき人物―は今も原子力安全保安院のなかで重職についています。

保安院の幹部は最近、耐震設計ガイドラインの見直しを行う予定は今のところない、と発言しました。しかしこの耐震設計ガイドラインは、独立した中立的な規制機関であるはずの原子力安全委員会の管理下にあります。この幹部はこの発言によって越権行為を行っているのであり、さらには原子力安全委員会が政府の介入を受けてしまうことを示唆しています。

こうした事実の上にHIV輸血スキャンダルや年金管理記録の消失といった政策的にも深刻な大失敗が重なってきます。議会は現行政権の原子力安全政策の不備を先の地震によって浮き彫りになった問題と共に精査し、原発の保安政策を抜本的に見直すべきです。

そうしなければ、日本の原子力安全の未来は存在しえません。

石橋克彦は神戸大学都市安全センターの教授。

この記事は2007年8月11日にHerald Tribune/Asahi Shinbunに掲載された。Japan Focusにも同日掲載された。

訳者注:

・石橋克彦氏HP:

http://historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/2011touhoku.html


カテゴリー: 米メディア, 日本メディア タグ: , , , パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中