「福島の大事故は国家と専門家の失墜を象徴している」仏ルモンド誌 3月30日付全訳


東京、特派員

日本国民の将来は官僚任せから脱却し、とうに遅れている意識改革を行えるかということにかかっている。

分析

日本は現在、原発史の中で最悪の事故となる可能性との闘いに長期的―少なくとも今後数週間の間―駆り出されている。その中でも今すぐに未来に目を向けるべきだという声も上がっている。ビジネスに関する日刊紙である日経の岡部直明は社説で「逆説的にこの惨劇は失われた10年の終焉につながるかもしれない」と書いている。失われた10年とは90年代初頭のバブル経済の破裂、そして先の金融市場破綻によって日本が抜け出せていない不景気の状況を指す。

「日本はその失墜を自ら修正することはできない」と岡部はいう。「この悲劇は新しい出発の兆しとならなければならない」これは被災地を復興することに限らず、第二次大戦以降の経済発展の大きな指針を見直さなくてはならないだろう。3月11日の地震の被害から復興するには膨大な作業量が予想され、そのための予算は16兆円から25兆円と試算されている。しかしこの世界第三位の経済大国が復活するための経済的および技術的な手段を持ち合わせていることは、大震災の被害を省みても、疑いようがないだろう。

日本国民はそれが必要な時に自制と忍耐を発揮できることを証明した。例えば個々人の節電活動や買い占めの自制などはより悲観的な人々に対して連帯が可能であることを示した。この社会道徳を兼ね備えた経済大国は私たちが想像するよりも早く惨状から脱するだろう。しかしこの復活のプロセスは一体どのような基準や基礎を基に行われるのだろうか?

国家と原発を運営する企業の責任の問題、そしてこのように危険なエネルギーを管理する上で情報の透明性を担保することのできない政界の問題は追及されるべきだろう。しかしより根本的には近代的な経済の土台から考え直すことを強いられている。エネルギー政策においては、専門家だけにその決定権を与えることを止めなければならないだろう。そして限られた手段と主張をもって自分たちの地域での原発の建造に反対する農家や漁業者たちに対して官僚的な傲慢さをもって対応することを止めなければならない。経済学者の内橋克人は「原子力の利用は専門家の意見を超えたレベルでの熟考が必要となる」という。

1960年代より、経済成長期に突入した日本は爆発的な経済発展と引き換えに自国民に対する多大なリスクを受け入れて邁進してきた。例えば海に垂れ流された水銀の汚染によって引き起こされた水俣病は何千人もの死者や奇形児を生んだ。何十年もの闘争の末、市民運動は汚染の責任者たちを法廷の場で裁くことに成功したが、多くの被害者はまだ賠償を受け取っていない。

今日の日本が直面している歴史的、経済的な文脈、そしてリスクの本質は異なっている。しかし昔の水俣病の責任者たちの意識と今日の原発管理者たちの態度は、危険を予防し、周辺住民の健康を最優先するべきという原則から省みた時、それほど異なっているといえるだろうか?水俣病の責任者たちはより悪意に満ちあふれていただろうか?原発の管理者たちはこうした原則を無視したのだろうか?いずれの場合においても短期的な利益追求が長期的な安全確保の原則よりも優先されたといえる。福島原発の管理者である東電のみがその責を負うのではない。この列島には東電と同じ体質の事業者や利権者が多く存在する。

同時に福島の惨劇を日本固有の問題として捉えてはならないだろう。日本における政治的な窮乏や官僚と利権の癒着は確かに浮き彫りになった。しかし、原子力エネルギーの管理を、利益追求を目的とする民間企業に委託することは果たして可能なのか、という問いは日本に限らず世界中の市民が再考するべきだろう。もしも可能ならば、共同体の利益を最優先して行動すべき国家はどのような手段をもって民間企業に対して「社会責任」を負わせることができるのだろうか?

この国家による制御の強化には幾つかの選択肢がある。「日本人はいまジレンマに直面している。いま顕在化しているリスクを受け入れて権力を持つ官僚をなお盲信するか、もしくは持続可能な発展を選択するか。この二つを同時に選ぶ事はできない。」と立教大の経済学教授アンドリュー・デウィットがThe Asia-Pacific Journalに書いている。

この悲劇は日本を新しい時代に押し出している。日本国民の将来は彼らがどれだけ意識を高められるかということにかかっており、自らの声を政府に届け、現在の官僚たちに放任することを止めなくてはならないということに気づかねばならないだろう。

ルモンド記者、フィリップ・ポンス

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