「世界中の原子力政策が見直されるべき」オランダ・エネルギー研究財団インタビュー [メディアパール誌3月22日付]


出典記事http://www.mediapart.fr/journal/international/220311/il-faut-revoir-tous-les-programmes-nucleaires-dans-le-monde

ジェラルディンヌ・ドラクロア記者、2011年3月22日

気候変動と闘うためにはどのようなエネルギー資源が必要なのか?この研究テーマに取り組むオランダ・エネルギー研究財団(ECN)のボブ・ファン・デル・ズワーン氏に、メディアパールは福島原発事故が発生した後に取材した。

訳者注:ボブ・ファン・デル・ズワーン氏略歴全訳:

ボブ・ファン・デル・ズワーン氏はオランダ・エネルギー研究財団(ECN)とコロンビア大学のレンフェスト持続可能エネルギー・センター(アース・インスティチュート、ニューヨーク)のシニア・サイエンティスト。過去にハーバード大学(BCSIA)、アムステルダム自由大学 (IVM)、スタンフォード大学(CISAC)そしてフランス国際関係研究所(IFRI)で勤務。学位は経済学(M.Phil [哲学修士]ケンブリッジ大学キングスカレッジ校, 1997年)、物理学(Ph.D [博士号]、1995、CERNとナイメーヘン大学; M.Sc [理学修士号]、1991、ユトレヒト大学)、国際関係学(修了書、1994、IUHEI,ジュネーブ大学)。現在の研究領域はエネルギー政策と環境経済学、気候変動、技術イノベーション、そして科学と世界情勢。『Climate Policy』,『Climatic Change』, 『Ecological Economics』, 『Energy』, 『Energy Economics』, 『The Energy Journal』, 『Energy Policy』, 『Environmental Science and Technology』, 『Journal of Environmental Economics and Management』, 『Nuclear Technology』, 『Physics Letters B』, 『Resource and Energy Economics』, 『Science』, 『Solar Energy』, 『Survival』,『Zeitschrift für Physik C』といった国際科学誌に約90本の論文を主筆および共筆してきた。2つの単著書籍、複数の書籍への寄稿、エネルギーと持続可能型開発の分野における二つの査読付き学会誌の共同編集者を務める。「科学と世界の諸問題に関するパグウォッシュ会議」の会員。

福島の状況はどのように変化していくとお考えですか?

まだ現時点では多くの不確定要素があり、多くの情報が足りていないので、複数のシナリオが想定できるでしょう。最悪のケースのひとつとしては、今後も看過できない量の放射性物質を放出するであろう3号炉と4号炉の使用済み核燃料プールを、今後数週間に渡って冷却する上で困難な状況が発生することが考えられます。それと同時に1号炉、2号炉、3号炉の炉心から放射性ガスの漏出のリスクが残っています。

最良の場合には、全ての原子炉とその使用済み核燃料プールにおいて電源が復旧し、全ての放水ポンプが作動し、原子炉とプールの冷却作業が安定化すれば、現在よりも安定した状況が見込めるようになるでしょう。

この事故は、レベル6か5に大分近づいて来ているとはいえ、1986年のチェルノブイリ事故ほど深刻にはならない可能性があると思います。個人的には福島の状況はレベル6だと考えています。なぜなら1979年に起きたスリーマイル島のレベル5の事故よりも相当深刻な状況に達しているからです。

原発周辺の30キロメートル範囲への避難および室内退避指示は十分なものなのでしょうか?

この範囲が十分ではなくなりつつあると思っています。なぜなら原発から数十キロメートル離れた場所でも無視できない放射線汚染が今日(訳者注:3月22日時点)計測されているからです。アメリカの専門家はだからより広い範囲を(自国民に)指示したわけです。なお、事故発生から今日に至るまで、アメリカの専門家たちは日本政府よりも情報を集めてますし、情報の共有に協力的です。

先日には4つの原発近隣の県でほうれん草と乳製品が禁止されました。この汚染は何を意味していますか?

不安な状況です。というのも測定された放射線量は自然放射線量よりもとても大きい値を示しているからです。これ以上の情報が開示されていないことには驚いています。現時点での主な仮説としては3号炉と4号炉の使用済み核燃料プール、そして1,2,3号炉から放出されているガスから検出されている放射線量はこれまで公式にアナウンスされた値よりも大きいだろうということです。

福島原発はMOX(プルサーマル)燃料を格納しています。これは特に問題となるのでしょうか?

MOXはプルトニウムを含む燃料です。そして使用されたMOXは通常使われる核燃料よりも多くのプルトニウムを含んでいます。この使用済みMOXは3号炉とその使用済み核燃料プールの中に存在しており、そこからより漏れ出る放射性ガスはとても強い放射線を放ちますし、化学的見地からいっても非常に有害です。

東電による福島原発への対応はどう思われますか?

東電はもっとうまくやれたはずという結論にもうすぐ落ち着くのではないかと思います。現在のようなひどい状況の中で批判するのは簡単ですが、それでもこの企業は過去において重大な過ちを多くも犯しています。そして不幸なことに今回の原因の責任そして対応の拙さもその過ちの歴史に積み足されていくでしょう。

CO2を排出しないエネルギーを排除するような余裕はない」

ヨーロッパでは最も危険な原発はどこでしょうか?

極限的な状況や「連動するリスク」に耐えるためにという意味ではヨーロッパ中の原発が検査され、再検討されそして適応する必要があります。地震と津波の連動に匹敵するぐらい破壊的なシナリオはヨーロッパでも十分起こる可能性があります。こうした原子炉の内、旧ソ連圏の原発は特に再検査が必要です。

ドイツ政府は2020年に稼働停止が予定されていた原発の寿命を12年も延命させてきましたが、現在この法律の適用を三ヶ月延期し、最も古い7基の原発の稼働停止を決定しました。この180度の方向転換についてはどう思われますか?

アンジェラ・メルケル首相のこうした決定は次の選挙を見越してのものでしょう。投票後も長期間稼働停止するかどうかは確実ではありません。選挙後にこれらの原発が再稼働しても不思議ではないでしょう。

このように原発を止めたり稼働させたりする政策は危険でしょうか?

これは特に原子力産業にとってマイナスに働くでしょう。なぜならそうした(いきあたりばったりの)政策は計画能力に懐疑をもたらしますし、それは経営的にも損失に繋がります。それ以上に重要な現実として、世論は原子力問題の一部であるということです。ドイツはこの問題にとても敏感ですし、ドイツ人はヨーロッパの他のどの国民よりも原子力に対して批判的です。まずはこの点を踏まえないといけません。この7基の原発を数ヶ月後に再稼働させることは技術的には簡単です。しかし、当初予定されていた寿命を越えて稼働させようとするのならば、確実性と安全を保証するために多大な投資がされる必要があるでしょう。

今回の福島の事故で原子力エネルギーそのものが再考させるべきなのでしょうか?

今日原子力エネルギーに課されている大きな挑戦の数々から目をそらしてはいけないのと同時に、気候の変化にも注意しないといけません。個人的には、私たちはCO2を排出しないエネルギーを排除するような余裕はないのだと思っています。この議論は何よりも合理的に成されねばなりません。安全と確実さが保証されるために、世界中の原子力政策が見直されるべきです。ただ今は原子力エネルギーをその他のエネルギー政策から排除すべきと言うべきではありません。原子力を選択肢から排除するとすれば、現在私たちが直面している気候変化の問題に対処するためにあまりにも膨大な非炭素資源が必要となってしまうからです。

もちろん、地震や津波の危険が頻発する国ではなおさらのこと、原子力エネルギー利用の仕様の再考も確実に必要です。例えば、トルコは今後5年間で幾つかの原発の建造を検討しはじめていますが、トルコも地震が頻発する国なのでリスク検討から再開しなければならないでしょう(リンク先記事題名:【「原子力で既に遅れをとっている」というトルコは原発計画を手放さない】2011.03.18付 AFP記事)。もしも安全保障のコストが高く付きすぎれば原発計画の採算性も異なってくるでしょうし、トルコの決断も変化するかもしれません。

もう一つ例を出すと、福島では起こった過ちの一つとして、使用済み核燃料プールをもっと気密性の高く分厚い隔壁で覆わなかったことが挙げられます。同様に、保安上の観点から言ってもプールを建物の7階に配置し、大量の使用済み燃料で満たすことには疑問を抱かざるをえません。以前から指摘されていたことでもありますが、今後はこうした過ちを繰り返してはなりません。こうした教訓を今後の原発建造に活かさなければなりません。

未来のためにはどのような代替エネルギーが考えられるのでしょうか?

代替的なエネルギー案はたくさん存在します。そしてそれはどの国で検討するかによって異なります。オランダでは、私は洋上の風力発電を強く支持しています。地上での風力による発電量は無視することはできませんがタービンを配置する土地が足りないので大した量にはなりません。そして何よりも地上での風力発電は騒音公害や景観を損ねるといった問題が付きまといます。しかし洋上風力発電を考える時こうした障害は存在しないので、実現のための努力を増大し、政府による推進を強化しなければなりません。同時にその発電量を気候変動と照らし合わせても十分なレベルまで引き上げるためには、現在の洋上風力発電への投資を少なくとも10倍は増やさないといけません。なぜなら原発一基と同量の電力を生産するためには何千ものタービンを配置しないといけないからです。風力発電の分野では徐々に競争が激しくなってきていますが、洋上風発はまだ比較的未開拓です。しかし技術的な進歩は着実に起きており、その実現のためのコストも低下していくでしょう。

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