「アメリカは日本の原発に複数の新たな脅威を指摘している」ニューヨーク・タイムズ紙4月5日付記事全訳


アメリカは日本の原発に新たな沢山の脅威を指摘している – 2011.04.05
記者:ジェイムス・グランツ、ウィリアム・J・ブロード

アメリカの原子力規制委員会(NRC)の機密アセスメント(評価)報告によると、日本の原発危機の援助に遣わされたアメリカ政府の技師らの話しとして、問題の原発は長期にわたって続く幾つもの新たな脅威に晒されており、しかもその脅威は、場合によって、まさに原発の安定を図る対策そのものによって増幅されるというのである。

3月24日付きの、このアセスメントで提起された新たなの脅威の一つに、放射性冷却水を注ぎ込まれる原子炉格納容器が、3月11日の大地震のあとにも続く余震でストレスが増加し、破裂する恐れがあるというのである。さらに、注ぎ込まれる海水の水素と酸素によって格納容器内の爆発の可能性があるほか、溶融した燃料棒と海水の塩分の蓄積が炉心冷却用の水の流れを妨げる過程にも言及した。

この数日、作業員たちは核燃料の過熱を防ぐために取られた緊急措置の副作用に悩まされており、その副作用の一つは放射性水の漏洩とその水に足を踏み込んだ作業員の被爆である。報告と関係者のインタビューを総合すると、作業員の安全と原子炉の長期安定の回復に水がいかに複雑な問題を作り出しているかが分かる。

報告は新たな爆発や余震による被害の可能性について分析していないが、これらのいずれも、炉心からのより重大な放射能放出を防ぐ最後の防壁である、故障した原子炉の格納容器を損傷する恐れがある。不完全な冷却により燃料が過熱し、溶融し続ければ、一部の専門家によると、長期的に溶融したままの放射性物質の塊が残る可能性もある。

ニューヨークタイムズが入手したこの文書は、福島第一原発でこれ以上の燃料溶融を防ごうと奮闘している日本当局が提供したものより詳細な技術分析を示している。それでも、この文書は主に日本側がアメリカの専門家と共有してくれたデータに基づいているようである。

この文書は、正常に作動する冷却系統なしで、いつまで核燃料に水を注ぎ続けられるかという問題を提起している。専門家によると、原発が安定するまで燃料を何ヶ月も冷却し続けなければならないが、水を燃料にかけることで生じるリスクが、原子力産業もやっと気づき始めたばかりの新たなチャレンジを引き起こすのではないかという懸念も生まれている。

また、この文書によると、爆発で、原子炉の上にあった使用済み核燃料プールの粒子は原子炉から一マイル(訳注:1.6キロメートル)もの範囲に飛び散り、二機の原子炉の間にも高放射性物質が落ちており、作業員の安全確保のために、整地されなければならないという。初期の水素爆発の一つで放出された放射性物質の存在から見て、放射能の高いこのプールが、発表されたものより大掛かりな損傷を受けている可能性を示している。

日本で使われているGEのものと同タイプの原子炉で働いた経験があり、今は「憂慮する科学者同盟」で原子力安全を担当している原子力技師のデヴィッド・A・ロックバウム氏によると、この文書に見られる三つの原子炉が抱える様々な問題によって問題解決の可能性はかなり不確実である。この文書の作成には関わっていない氏はこう語っている:「彼らは苦境から抜け出してはおらず、少なくても苦境の出口には到達しているとばかり思っていました。しかしこの文書を見ると、かなり違った感じになりますし、事態はもっと深刻であることを示しています。下手をするともっと大きなダメージが起こるかもしれません。」

様々な提案のうち、原子力規制委員会(NRC)はとりわけ、爆発を引き起こす危険のある水素と酸素をパージするために窒素を格納容器に注入することを提案しているが、東電も水曜日にその準備を始めると言っている。

文書はまた、臨界という核反応のが炉心で再び起きないよう、ホウ素(ホウ酸)を冷却水に入れ続けることを勧めている。

そう言っても、文書を作成した技師たちは再臨界がすぐにも起きるとは思っていない。電力研究所の原子力副主任でこのアセスメントにも参加したネール・ウィルムスハート氏は、「臨界が起きそうだと示すデータは見かけない」と言っている。

この文書は、日本政府と東電を援助しているNRCの原子炉安全部会のために作成されたものであり、電力会社、日本原子力産業フォーラム、アメリカのエネルギー省、GE、電力研究所(非営利独立団体)など日本やアメリカの様々な組織から得られた最新のデーターに基づいているという。

文書は福島原発の六機の原子炉のそれぞれについて細かいアセスメント(評価)と勧告を行っている。事情に詳しい原子力専門家はこのアセスメントは常時更新されるが、全体として3月26日のバージョンは今の考え方に一番近いという。

一号機、二号機と三号機の損傷した炉心の状態をこのアセスメントは克明に描写した。泥状の燃料と注入された海水の塩が原因で、一号機内の水の流れはかなり制限され、おそらく詰まっているのではないかと言っている。炉心では「恐らく水位はなくなっているだろう」とアセスメントはいう。しかも、その結果、どれだけの冷却が実際燃料に達しているかは定かではないという。二号機も三号機も同じ問題を抱えているが、恐らく詰まりはそれほど深刻ではないともいう。専門家によると、冷却を海水から真水に切り替えたことで、塩は一部流されたかも知れない。

格納容器内の水位を上げることで燃料を水没させて冷却する案が度々持ち上がるが、アセスメントは、水の重みが格納容器の耐震力に与える影響に警告を発している。原発デザインの専門家によると、これは、満たした水が格納容器に与えるストレスを警告したもので、水が多ければ多いほど、格納容器が余震で破壊される危険をはらむのである。GE で原子炉デザインに携わったこともあるマーガレット・ハーディング氏は、「私が日本人の立場なら、地震以来その構造の健全さがまだチェックされていない格納容器の中に何トンもの水を入れることを躊躇するでしょう。」という。

この文書はまた、海水が高い放射能の環境で出す水素と酸素によって、セメントと鋼鉄でできている格納容器内に危険な気体の発生に懸念を表明している。

事故の初期の水素爆発はいくつもの原子炉建屋を大きく損傷し、その一つの格納容器にも損害を与えたようでもある。その水素の発生は核燃料の金属被覆の化学反応によるもので、文書では、地震と津波で失われた機能を回復させ、これらのガスを抜き取り、容器内を窒素で満たすよう日本側を促している。

専門家によると、炉心の放射能で水の分子は分解され、水素を出すという。ウィルムスハート氏によると、発生した水素の量は小さいと計算されているというが、ノートルダム大学の物理学者のJ.ラヴェルヌ氏によると、少なくても水素は燃料棒の近くに発生し、酸素と反応する可能性があり、「そうなれば、燃料棒の近くに爆発物が生成されることになる」。

最近、専門家たちは、格納容器の外にある使用済み燃料棒が入っているプールは溶融した炉心より大きな危険を孕んでいると警告している。建屋の上部にあるこのプールは使用済み燃料棒を水中に浸すのが目的であるが、冷却システムを失っている。原子力規制委員会の文書は、4号機の燃料プールは初期の段階で水蒸気爆発を受け、大量な放射性物質を放出した可能性があると指摘している。

専門家たちが心配しているのは、爆発がこのプールの屋根を吹き飛ばし、その放射性内容物をさらけ出してしまったことである。これに比べて、原子炉は強靭な圧力容器を持っており、炉心の燃料溶融から発生する放射能を上手く堰きとめておく能力がある。

ロックバウム氏はいう:「世界一のジャグラーでさえ、放り上げたボールが多すぎると捌き切れないことがある。彼ら(日本)は将来にわたって解決しなければならない難題を沢山抱えており、一つでもミスをすれば事態はよりいっそう悪くなる恐れがある。」

ヘンリー・ファウンテンがニューヨークから、マシュー・L・ウォルドがワシントンからこの記事の執筆に貢献した。

出典記事:http://www.nytimes.com/2011/04/06/world/asia/06nuclear.html

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