「福島、罪深き沈黙」ル・モンド誌3月26日付全訳


出典記事:http://www.lemonde.fr/asie-pacifique/article/2011/03/26/fukushima-silences-coupables_1498886_3216.html#ens_id=1493258

東電の代表、3月23日木曜日 (AFP/GO TAKAYAMA)

東京特派員 – 政府からの情報提供が限られる中、災害の具体的な影響を自身では計りかねる一般の日本人の多くは、その規模の大きさを少しずつ実感するにつれ、大きな不安を抱えている。そして、民間テレビ局の放送やブログなどで目にする原子力専門家の証言などを通じて、今回の災害の裏にある存在に少しずつ気付き始めている:「原子力ロビー」と呼ばれる存在である。

経産省の懐深くに入り込み、原子力政策に絶大な影響力を持つ、資金豊富で強力なその団体は、電気事業連合会、原子力安全・保安院を始め、東芝や日立など原子力発電所の開発を行う企業体や運営会社などで形成される。

このロビーは、原子力と関係が深い官公庁からの天下りを電力会社に受け入れ、情報隠蔽にかけては芸術的なまでの手腕を発揮してきた。原子力に関するメディアの扱いをより完璧なものにするために、新聞やテレビに莫大な広告費を注ぎ込んでもいる。

この状況は、2009年の政権交代後も変わる事は無かった。民主党の政権維持は連合に頼っており、その連合相手の一つが、原子力発電を重要視するエネルギー産業の団体だからだ。

官僚、監視団体、原発製造に関わるメーカー、そして電力会社からなるこの巨大な連合は、反対意見を押し殺すだけでなく、原子力に対する疑問そのものをもかき消してしまっている。一方で、証拠が全くないというわけではない。2002年には、国内電力会社10社に対して、日本の原子力の明瞭期である1970年代から事故の隠蔽を行ってきたという疑いが浮上した。最初に疑念を向けられたのは、福島原子力発電所の所有事業者である東京電力だ。

様々な物的証拠に加え、旧東電社員の証言もある。未だに確認は取られていないが、もしそれらの内容が事実であれば、大変恐ろしいことだ。東電を初めとした電力各社は、長期的な安全性の確保よりも短期的な利益を優先し、地震大国であるにも関わらず震災や津波の被害を軽視していたというのだ。

福島原子力発電所の安全基準は、1956年にチリで発生した5.5mの津波を想定している。原子炉自体は地震の揺れに耐え、自動的に停止した。しかし強度の劣る冷却装置は、故障してしまった。発電所の設計に携わった東芝のエンジニア2名は、設計の基準として採用した「リスクの想定が甘すぎた」と東京新聞への取材に回答している。

経産大臣は口頭で、「この危機的な状況が安定したら、東電の運用体制を検証する必要がある」と述べた。しかし、その間にどれだけの犠牲者が生まれるだろうか?

東芝でエンジニアとして働いていた匿名人物の証言はより直接的だ:「日本が直面しているのは天災ではなく人災だ」。また、Wall Street Journalの長文記事では、日本共産党所属の衆議院議員で原子力工学の専門家でもある吉井英勝がNISAの資料を基に執筆した、2010年出版の著作からデータを参照している。それによると、福島の原子力発電所は、2005年から2009年の間だけでも15件と、日本国内でもっとも多くの事故を起こしており、その職員が過去10年で最も放射線に曝された人々だという。もう一つ大きな問題も指摘されている。東京電力は、発電所設備のメンテナンスに経験の浅い下請け業者を用いており、さらにそうした業者が正に今、災害との戦いにおいて大きな犠牲を払わされているのだ。

東電の対応が出遅れた事も非難の対象になっている。ある高級官僚は共同通信の取材に対して、「東電は危機を認識するのが遅かった」と述べている。地震と津波に襲われた直後の二日間、東電の関心は、住民を守ること以上に、発電所の設備をいかに維持するかに向けられていたのではないだろうか。

しかし、地震発生時に現地にいた、世界最大の原子力産業複合企業である仏アレバ社の社員8名は、なぜかすぐに危機を認識できたようだ。アレバ社は、顧客である東電の原子力発電所に関して、何らかの危険性を指摘したことは過去に一度もないにも関わらず、その8名はその場にいた誰よりも早く避難したのだから。

フィリップ・メスネー、フィリップ・ポンス

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「福島、罪深き沈黙」ル・モンド誌3月26日付全訳 への14件のフィードバック

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  2. 大澤浩之 より:

    この「逃げた」仏アレバ社の社員8名は、事故処理の指示管理を担えたであろう、最重要幹部達ではないのですか? もし、事故を起こした当事者として、この8名を認定できるのであれば、公的に裁く必要があるのではないでしょうか。(今更ですが)

  3. 大澤浩之 より:

    説明不足でしたので、補足です。 爆発事故後に、「週刊プレイボーイ」誌にて、東電の現地作業員の「これだけは言っておきたいこと」のコメントのひとつとして「普段はふんぞり返って偉そうにしている管理指示系統の幹部社員8名が、8人とも全て直後に逃げ出した。一人でも残ってきちんとした事故処理指示を出していれば、状況は違っていたのではないか」との事でした。その後、その「逃げた8人」というものを検索しておりましたが、このアレバ社8人というのが、出向役員または上級管理職者ではなかったのかと推測した次第です。

  4. shanti より:

    このル・モンドの記事だけではなく、外国メディアによる記事について一般的に言えることの一つとして、「未だに確認できていない」情報を元に推測を書き、自国内の読者にセンセーショナルなニュースを発信する性質があることは否めないと思っています。
    現在私はイギリスにいますが、イギリスメディアの発信する情報を読むことはやめました。
    「日本中でマスクをしているほど、日本人は原子力による汚染におびえている」→少し知っていれば花粉の時期なだけ。
    「日本は、外国からの支援を積極的に受入れず、日本についても、輸送手段さえ準備してくれず、逆に、国内の輸送を自分で賄うよう言われた」→国内のエネルギー資源や輸送手段を準備することを当然とする傲慢さ。
    「日本の東京都下に住むイギリス人女性によると、近所の人々はパニックに陥り、実際は強盗があいついでいるという」→・・・・・・。
    外国メディアが何か言った、イコールそれが全て、ではなく、それに対する疑いを持つこと、ソースまでたどり着くだけの読み手側の能力も持つべきかもしれませんね。

    • akismet-1193b7620f18c905dcb32522a326eb2c より:

      コメント参考になりました。
      書かれている通り鵜呑みが一番危険ですね!

  5. 相澤秀人 より:

    復興会議なるものが官邸主導で始まったというニュースがテレビで昨日流れた。ネットメディアのニュースによれば、その席上で招聘された梅原猛によって、原発震災を議案から除外しようとする会議の方向に異議と抗議を唱えた。これは当然であり重要な事であるにもかかわらず一切報道されない。政府は原発事故の責任から国民の目をそらすべく復興モードに世論を誘導しようとしている事は猿にでも解る愚かな態度だ。このように政府、東電、及びマスコミの態度は信頼出来るものではなく、復興会議と言う報道を聞いてますます将来への不安が高まるのである。さらに問題は一般国民がこの期に及んで、どれだけ危機意識が共有出来ているだろうかという事である。確かに、各地でデモは頻発し、有識者の警告、発言も相次いでいるものの、それはネットを駆け巡るものであり、10000人規模のデモでさえメディアは一切口を拭うように報道しない。メディアの態度は目の前で人が暴力を受けているのに見てみぬ振りをしている事に等しい。だから、ネットを使用しない人々の意識は高まらず未だに漠然とした不安に留まっているのだけではないか。なんとかなると思ているのではないか。テレビを見てると、あたかももう原発事故は一段落した事のように錯覚する事さえある報道ぶりだ。あろう事か、そのような国民の意識の低さを良いことにネットメディアにたいし政府は情報規制強化の法改正に乗り出している。ネットでの発言が萎縮すればますます正確な情報は伝わらなくなり、政府、東電、メディアの意のままに国民は操られることになる。つまり今までどおり何も変わらぬと言う事だ。その先に予測出来る事は、もう恐ろしくて話す気になれない。

  6. Kei より:

    沖縄電力には原発がないので、9社が正しいです。
    元記事を書いた方には残念です。
    少しだけ、記事の信頼性を損ないました。
    でも、良く調べられていますね。

  7. 匿名希望 より:

    仏AREVA社は、http://www.47news.jp/47topics/e/202360.phpの記事によります
    と、MOX燃料を日本に向けて4月上旬に輸送しようと計画していたそうで、
    同サイトの3月26日の記事から、この発注元が関電および中部電力であることが
    分かります。また、プルトニウム239のことを調べますとWikipediaから、米ソ冷戦
    終結後、不要となったプルトニウムが米だけでも今なお100トンも備蓄されていること
    や、これらをMOX燃料や一部放射線治療として流用すること、本来MOX燃料は高速
    増殖炉で使用されるべきで現行の軽水炉では問題が多いことなどがわかります。
    つまり、安全神話をねつ造したり、日本もそれに加担して情報隠蔽を重ねている
    こと、原発を停止しないこと、福島原発で使用されているMOX燃料の配合並びに
    化学毒性、放射線毒性なども明らかにしないのは、原子力ロビーの背後にいる存在
    にとって都合の悪い何かがあるからだと思われます。

  8. また、プルトニウム239のことを調べますとWikipediaから、米ソ冷戦
    終結後、不要となったプルトニウムが米だけでも今なお100トンも備蓄されていること
    や、これらをMOX燃料や一部放射線治療として流用すること、本来MOX燃料は高速
    増殖炉で使用されるべきで現行の軽水炉では問題が多いことなどがわかります。

  9. medaka4841 より:

    結局 知らないことが罪になるってことのようですね。
     広島長崎が形式的な報道になってること自体危機感を覚えている世代です。
    高濃度の放射能は今後も遠慮なく撒き散らかされ、見えないから怖さも解らないという悪循環です。
     原発で働く原発ジプシーと呼ばれる方々がどれほど高度の被爆をされていることか!もう ボロボロになっているはずです。会社は知らん振りでそんな人はいませんと口を拭っているでしょうね。
     メルトダウンが見えてきてるんじゃないでしょうか。
    核爆弾と別物と思ってはいけないんです!

    • 汽車なお より:

      本当に・・・心して、放射能と対峙しなくてならないなんて。人間の過信がもたらした現実です。

  10. isobe tomoko より:

     上のほうのコメントの中に
    ≫「日本中でマスクをしているほど、日本人は原子力による汚染におびえている」→少し知っていれば花粉の時期なだけ。
     と書かれていますが、放射能を少しでも避けようと、マスクをしている人も増えています。200億円をかけて開発しながら政府が公表しなかったsppedi~放射性物質拡散予報~が今になって公開されたようですが、それによると東京も明らかに被曝しています。
     ツイッターでは、鼻血、だるさ、リンパの腫れ、皮膚の赤み、口の中の苦み、口内炎など、被曝の初期症状とみられるものが報告されていますが、マスコミにはまったく取り上げられず、公的機関も動いていません。
     国は、国民の命や健康よりも、経済や原子力の維持を選んだのだと思います。恐ろしい国です。
     

  11. yuka yamashita より:

    日本政府と東電、マスゴミは逃げ、村長や住民だけは残った。4月22日<ボンヘッファーの言葉> 良い羊飼いは、決して羊から離れず、みずからの死をかけてでも羊を救おうとする。しかし雇われた羊飼いは、報酬のために仕事をするだけであり、危険な時には、群れを捨てて、逃げ去る。

  12. ジョージ より:

    ありがとうございました。
    翻訳して頂いたお陰で状況がわかりました。
    ブログに転載させていただきました。
    http://george743.blog39.fc2.com/blog-entry-241.html

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