『プルトニウムとミッキーマウス』、ザ・エコノミスト誌3月31日付記事妙訳


THE ECONOMIST 2011年3月31日号
出典記事:http://www.economist.com/node/18488463?story_id=18488463

プルトニウムとミッキーマウス

日本の核危機は今だ続いており、東電だけでなく、国のエネルギー政策そのものの重大な欠陥を露呈している。

真昼にも拘らず、世界最大の民営電力会社、東京電力の本部は陰気な薄暗さに包まれていた。幹部らは頭を垂れ、東電がかけた迷惑について小声で謝罪している。暗い光のいたずらで、壁に掛かっている東電のロゴは変形したミッキーマウスに見える。

そこから250キロ離れた福島第一原発では、東電の社員と下請けの作業員が、三つの破損した原子炉からの放射線漏洩を食い止めようと奮闘している。彼らの作業条件は許容しがたいほど険しく、一年間で許容されるレベル以上の放射線に数時間も晒されてしまうことがしばしばである。ビスケットと缶詰だけ食べ、一枚の毛布をかぶって床でそのまま寝るのである。中には今回の大津波で家や家族を失った者もいる。東電は彼らを兵隊と見做し、「英雄とは見ていません。彼らはただやるべくことをやっているだけです。」と言っている。

東電は今回の日本での原発事故の責任の大半を背負っている。大量の放射線汚染水の存在と海水の高い放射線汚染から見ると、事故の鎮静化は今なおかなり程遠い。ヨウ素とセシウムの放出があったことは、少なくても一機の原子炉心が放射性物質をばら撒いたことを示している。その放出を抑制するシステムがかなり損害を蒙っていることは明らかである。汚染水を収納するタンクはいずれ満杯になり、作業員たちの環境は更に危険度を増し、それによって、冷却システムの修理や重要な測定機器類の設置などは更に時間がかかるであろう。

原発の損害の度合いはあまりにも深刻で、危機がいつ収束するかは東電の幹部にも分からない有様である。放射線レベルは大体下がりつつあるが、部分的にIAEAの避難水準を越えるところもあるため、避難指定区域の拡大は必至であり、原発周辺の地区が何年間にも亘って危険状態のままにあることが懸念される。

非難の対象は事欠かない。東電はあるタービン建屋内の汚染水の放射線レベルを正常レベルの一千万倍と誤測定したが、実際は、それでも深刻な10万倍であった。下請け企業はしばしば現場の作業員たちの安全について懸念を表明している。東電が如何に準備不足であったかを示す一例に、水の被爆度を測る計器は人体の健康に脅威になり始める千ミリシベルト以上を計れないことがあげられる。

菅首相が東電本社内に危機管理マネジャー数名を押し付けたことで、東電と菅政権との摩擦が増えている。東電が原発を何とか(廃炉せずに)維持しょうとしたために、原子炉の冷却に海水の使用をためらったと政府関係者は私的に言っているが、東電はこれを否定した。しかし、菅直人は東電の津波対策を公に批判しているし、閣僚の一人の玄葉氏に至っては東電の国有化の可能性にも言及したが、もっともこの場合、地元の福島に対して補償を受けられることを保証するためであろう。他の政府関係者は国の介入について立場を明らかにしていないが、東電の株は3月11日から75%も暴落している。

外部の専門家たちによると、東電の原発建設過程での数々の不備の結果として、その理事会には原子力専門家がいなくなってしまっている。現社長の清水氏は原発事故に出くわした三人目の社長である。自身も原子力技師であったコンサルタントの大前研一氏に言わせると、「この会社は根っこまで腐っている」という。氏によると、東電は福島原発の敷地内にあまりにも沢山の使用済み核燃料を貯蔵している。一箇所に余りにも沢山の原子炉を集中させすぎている(福島第一に六機、新潟の活断層上に建てられた原発には7機も)。そして、代替の電源を用意していないことも指摘される。

しかし、問題は東電に止まらない。経済産業省は規制機関を監督し、安全問題をも担当しているが、同時に原子力産業の振興をも担っている。菅首相はこれを変えようとしているそうである。大前氏によると、大体の原子力科学者は電力会社の援助を受けており、その自主性が損なわれている。氏の言葉を借りれば、彼らは政府の安全委員会の「クリスマスツリーの飾り」に過ぎないのである。

数々の問題は互いに関連しあっている。自民党の河野太郎氏は、経済産業省と規制機関と原子力産業との「魔の三角形」を指摘している。河野氏の事務所によると、同省のエネルギー担当高官であった石田氏はそのまま東電の高級顧問に天下ったのである。河野氏はまた日本のマスコミが、高額の広告費のために、すっかり原子力産業のポケットに入ってしまっていると指摘する。

東電を専門に研究しているテンプル大学現代アジア研究所のポール・スカリス氏は、今の東電バッシングの原因の一部は、政治家、官僚と選挙民が自分を責めなくて済むためだという。日本の原子力開発は1973年のオイルショック以降に取られた国家的決定である。しかし、チェルノブイリ事故とスリーマイル島の事故以来、地元住民は「こっちに来るな」という態度に変わった。そこで、電力会社と政府は対策として税金の低減や補助やその他の優遇措置を取った結果、発展国では最も高額な電気料金となったのである。

それでも、スカリス氏によると、東電のような電力会社は地元の反対を潜り抜けて原発を建設してきた。その結果、沢山の原子炉を一箇所に集中させざるを得なかったのである。東電が使用済み核燃料を敷地内にそのまま貯蔵してきたのは、他にどこに持っていくかについての合意がなかったためである。同時に、発電能力の不足から、余剰電力の余裕はこの20年間下がり続けているのである。

地震と津波の結果、東電の発電能力の28%は閉鎖されたままである。3月30日、政府はようやく当然のことを認め、福島第一原発を永久に廃炉にする可能性を明かにした。これで、日本全国のエネルギー能力の約1.8%が失われる。また、計画ミスの典型ともいえるが、日本の配電システムは西と東とでは異なった電流で運営されてきており、互いに電力を融通することを難しくしている。火力発電施設が修復され、新しい小さなガス発電所がすばやく建設されない限り、数ヶ月、もしくは数年間ものエネルギー不足は避けられず、経済に大きな打撃を与えるであろう。

これらは東電を厳しく追及する理由になるが、この危機は又この国のエネルギー政策の失敗をも表している。料金は非常に高く、発電は政府の目標を超える温室効果を生み出しているほか、日本は使用済み核燃料の再処理によって原子力の自給自足を図るという目標を達成していない。その上、核の危機に直面している。それは東電のみならず日本全体の所為でもある。より信頼できるエネルギー戦略を求めるならば、日本国民はまず自らの全体的失敗を認めるべきである。

[訳注:一ヶ月ほど前の記事のため、この翻訳には原文を多少省略した部分があります]

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