「ドイツはどのように原子力から脱却するのか:計画の詳細」仏メディアパール誌ドイツ環境省担当者インタビュー記事全訳


"Horns rev offshore wind farm" by Vattenfall (Flickr)

"Horns rev offshore wind farm" by Vattenfall (Flickr)

出典:http://www.mediapart.fr/journal/international/020611/comment-lallemagne-va-sortir-du-nucleaire-le-detail-du-plan

6月6日月曜日にはアンゲラ・メルケル独首相が原子力からの脱却に関する法案を提示する予定となっている。それは、今後40年間のドイツの新しいエネルギー戦略を定義するもの、新「エネルギー構想」と見なされるものになる。しかしながら早くもその大筋はすでに確立されている。ドイツ環境省内の気候保護を担当するグループの長であるパトリック・グライヒェンは、本誌(メディアパール)に対して一般公開前にプランの詳細と解説を明かしてくれた。

行政は、議会が非常に迅速に、7月8日までにこの法案の全条項を可決することを希望しているという。しかし、原子力産業の経営者の集団抗議(電力会社のエーオン社(EON)は昨年設けられた原子力燃料への税金に対し訴訟を起こすことを発表した)や、反対派の批判、地方権力の抵抗により、夏以降に可決が遅延する可能性もある。

メルケル首相は土曜日(5月28日)、新しい戦略を彼らに提示するために州代表者や議長をベルリンに召集した。そして、先週の日曜(5月29日)、ベルリンは福島の事故が原因で原子力から脱却するという決定を発表した。それによれば、現在、検査のために停止している8つの原子炉は再稼働するべきではないこと、他の6基は遅くとも2021年に、最新の3期については遅くとも2022年にその運転を停止することが宣言された。

この決定はドイツ政府にとって、単に原子力を放棄したということに止まらない。それは「再生可能エネルギーの時代」にドイツ国を突入させることを意味する、とパトリック・グライヒェンは言う。以下に、ドイツの新しいエネルギー戦略についての主要なポイントを提示する。

  • 2050年には再生可能エネルギーによって供給される発電量を少なくとも80%にすること (2030年には50%以上、2020年には35%)。今日、再生可能エネルギーの発電量は、全体のおよそ18%を占めている。今後、主な新しい再生可能エネルギー源は海上風力となる。2020年には追加の風力発電により10ギガワットまで、2050年には全発電量のおよそ3分の1が風力由来になることを目標としています。陸上風力の占める比率は2050年には全電力の20~25%の間になる。
  • 送電網を強化するための大規模投資が計画される。主に、海上風力発電の設備がある北ドイツと、人口や工業が集中しているために電力需要の大部分を占めている南ドイツ間の送電網が強化される。まだ存在していないこの送電網の開発は国家的な計画として打ち出される。そしてこれらの送電網は、ドイツではまだ本格的に導入されてはいないが、消費者にエネルギー消費量を調整することを可能にする「インテリジェント」(「スマート・グリッド」)なネットワークに支えられることになる。
  • エネルギー効率と節電に関しては、エネルギー消費量を2020年までに10%、2050年までに25%削減することが目標となる。全体のエネルギー消費量は2050年までに50%の削減となるだろう。この目標をどのように達成するのか?それには少なくとも、電化製品に関する欧州委員会のエコデザイン指令を、できるだけ早く施行することが必要となる。
  • 財政拠出については複数の収入源が充てられることが想定されている。今日既に電力消費者はエネルギー産業に対し、再生可能エネルギーを支援するために1kWh当り3.5セント支払っている。それは平均的な世帯で一月当り10ユーロにあたる。暖房に充てられる再生可能エネルギーやエネルギー効率の向上に関しては、「気候エネルギー」というファンドによって財政源が保証されている。そのファンドは創設されたばかりで、ヨーロッパ二酸化炭素排出権市場(EU ETS)で得られた利益により資金が確保される。2013年から、ドイツ政府は少なくとも1年に35億ユーロの収入を見込んでいる。既に施行されている再生可能エネルギー源についての法律は、技術革新を促進するために、毎年毎にそれら再生可能エネルギーの買い戻し価格を減らすようにしている。新しいエネルギー計画は、海上風力発電を除いて、この動きを加速することになる。したがって、太陽光やバイオマスといったエネルギーも今後、料金が低下していく。

こうした施策について、ドイツ環境省のパトリック・グライヒェンは次のように述べている:「我々は(この新しい計画を)短期的には投資として、長期的には利益として考えています。とりわけ、エネルギー効率の改善、そしてその結果のエネルギー輸入費用の低下という観点に立って考えると、このシステムは全体として我々に経済的な利益をもたらすでしょう。今後40年の問題、それは政策を打ち出しながらどのようにこの移行を組織していくかということです。」

Mediapart編集部:原発からの脱却が温室効果ガスの放出を増加させ、環境に対して危険な要因となる恐れがあると主張する人々に対して、どのように答えますか?

パトリック・グライヒェン:我々の温室効果ガス削減目標が(今回の計画によって)変更される予定はありません。我々は2010年9月にアンゲラ・メルケルが行った原子力発電所の稼働延長の決定の前からこれらの目標を掲げていました。結局、我々が元々準備していた政策に戻るだけです。

我々にとって、ガスは再生可能エネルギーの時代へ向けた過渡期的な技術です。というのは、それは風や太陽がない時に電力を作ることのできる柔軟性のあるエネルギー源だからです。しかし、エネルギー産業におけるガスの使用増加は我々がより多くの量のガスを使用するということを意味していません。建築物の耐熱性の改修のおかげで、住居地区におけるガスの使用量は低下するでしょう。これらの節約された分のエネルギーは電力産業において再利用されることになります。従って、ドイツへのガスの輸入量はおよそ一定となる見込みです。

2020年から、ドイツにおいては化石燃料エネルギーを用いて暖められる建物を建造することが不可能になります。これからの建築物にはとても高品質な熱設備つまりバイオマス、太陽光あるいは電気ヒートポンプによる暖房などが設置されるでしょう。そしてそれは強制力を持った法令として施行されます。問題はこれらの斬新な建物が現在は建築物総数のごくわずかにしか過ぎないということです。

なので主要な問題は現存の住居の改修の問題です。現在の改修率は1年に約1%となっています。もし我々が2050年までにこのテンポで続けたら、我々は40%の施設しか改修できないことになりますが、それでは不十分です。従って、この改修率を二倍にしなければなりません。そこへ辿り着くための方法は、次の選挙後(執筆者注:2013年)に制定されなければならないでしょう。今でも既に、我々は住居を改築することを許諾している家主に対し、助成貸付の形で補助金を用意しています。それはおよそ15億ユーロの予算規模となります。

石炭からの脱却は計画化しましたか?

我々の計画では、2020年以降、徐々に石炭の産出を減らしていくことになります。しかし、石炭についての政府の数値化された目標はまだありません。

フランスの原子力電力を輸入しなければならなくなりませんか?

3月15日以後に起きたことを振り返ると、我々は7つの原子力発電所を停止し、フランスから電力を輸入しました。(執筆者注:本件に関する本誌の記事を参照)。しかし、フランスの原子力発電所は既に最大レベルで稼働していたので、より多くの電気を発電するということはありせんでした。従って我々が輸入したものはおそらく、確信を持って言えないのですが、オランダで石炭から発電した電力であると思います。当時ドイツとオランダの間の送電網は最大の容量に達していたので、フランスを経由する必要がありました。

基本的に、私はフランスがより多くの輸出用の原子力エネルギーを産出する能力があるとは思いません。フランスができるであろう唯一のことは、ガスや石炭の新しい発電所を建設し、発電した電力をドイツに輸出することです。あるいはドイツに直接それらを建設することです。

ドイツは輸入せずに電力需要を満たすことができるでしょうか?

我々は2030年から、電力の純輸入国になれると考えています。現在、我々は毎年およそ毎時20テラワット(TWh)を供給する純輸出国です。将来に向けての我々のシナリオでは、我々は輸入国にならなければなりません。というのは、スカンジナビアの国々そしておそらく南スペインで電力を作り、そしてドイツで生産するよりもむしろ輸入するほうがコストがかからなくなるからです。

我々にとっては、それは価格の問題であり、エネルギー主権の問題ではないのです。我々がEU内で輸入するのであり、またそれが再生可能エネルギーである限り、そのことは問題とはならないのです。

電気使用量が上がる可能性は?

今まで産業に対する電気料金は値上がりしませんでした。ドイツ政府にとって、産業界から徴収し過ぎないことはとても重要なことでした。ドイツ企業は再生可能エネルギーやコジェネレーション(訳注:内燃機関、外燃機関等の排熱を利用して動力・温熱・冷熱を取り出し、総合エネルギー効率を高める、新しいエネルギー供給システムのひとつ[Wikipedia記事より])のコストの支払を免除されており、電力やエネルギーに対してはわずかな税金を支払っているだけです。その反面、一般世帯は、部分的には再生可能エネルギーの開発財源の確保という目的による電気料金の値上げに耐えなければなりませんでした。現在、それは一般世帯が支払う電気料金の約15%にあたります。しかし、一般家庭への負担を更に増加させるということは現在ドイツで議論を呼んでいます。

シェール・ガス二酸化炭素回収貯留(CCS)の技術には頼らなかったのでしょうか?

環境の観点からいうと、シェール・ガスはさらに難しいエネルギー源です。我々は一般化されていないガス源は必要ないと考えています。ドイツではいくつかの研究がありますが、その研究は非常に多くの化学製品を前提としており、個人的にはそれらの化学製品の開発は国民に許容されるか疑問に思っています。二酸化炭素の回収・貯蔵はより危険は少ないですが、それでもそれは強力な反対を引き起こしています。そのため、我々のシナリオにはシェールガスもCCSも含まれていません。

このインタビューはIDDRI(パリ政治学院 持続的開発と国際関係研究所)で6月1日(水曜)に開催されたフランスとドイツのエネルギー政策についてのセミナーの後に行われたものです。メディアパートにパトリック・グライヒェンへのインタビューという機会を与えてくれたブノア・マルティモール・アソとエマニュエル・ゲランには感謝申し上げます。我々の会見はAEDD(環境情報専門通信社)の記者とともに行われました。

Mediapart、ジャード・リンドガード記者


※ この翻訳記事はTwitterでの呼びかけに応えて頂いた読者の方によって行われ、当ブログ運営者が校正を行ったものです(全ての文責は当ブログ運営者にあります)。ご協力に改めて感謝いたします。また、他の読者の方からも広くご協力を受け付けています。ご興味のある方はこちらの記事をお読みください。

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