IRSN調査報告会 @ 在東京フランス大使館(7月7日):報告内容&質疑応答


7月7日に、フランス大使館でISRNの報告会がありました。1ヶ月ほど日本に滞在して、福島第一原発を始め、各地で調査した結果の報告でした。

壇上には、環境汚染専門のスタッフと、食物汚染専門のスタッフ2名が登場し、それぞれの専門分野に関する調査結果の発表を行いました。

1時間あまりの報告会は、前半で調査結果の説明、後半で来場者の質問に答えるという2部構成でした。

以下は、その報告会に出席した翻訳チームのメンバーが、発言内容を日本語に訳しながら取ったメモを、後から整形したものです。

福島第一原発の現状と、調査結果のレポート

環境への影響に関して

現状、3基の原子炉がメルトダウンおよびメルトスルーを起こし、核燃料が原子炉を貫通して建物下部まで落ちてしまっている状態と思われる。中に入ることができないため直接確認はできていないが、その可能性は極めて高い。

溶けた核燃料の固まりは水の中に沈んだ状態のため、放射性物質が空気中に飛散するといった環境への影響はあまり無いが、修復作業は極めて困難。

放射性物質の飛散を防ぐため、発電施設全体をカバーする構造を建設中。これにより、環境汚染を抑え、施設で作業を行う作業員の安全を守ることができる。

4号機は特に被害が大きく、今後の被害の悪化を抑えるために様々な修復をしている。特に問題となる使用済み燃料プールは、柱を補強するなどの工事がなされている。

施設全体で汚染水の量がすでに限界を超えている。しかし、それでも燃料を冷やすために毎時数トンの放水を続ける必要がある。汚染水は、1日にオリンピックプール1つ分ほどのペースで増えている。

原子炉の方は「すでに最悪の状況を迎えているため」、これ以上悪化することはできない。今、抑える必要があるのは燃料プールの方。何としてもこちらの状況が悪化しないようにしなければならない。

今後の展望の目安としては、状況の安定にあと数ヶ月かかると思われる。

燃料プールに残っている燃料を取り出し、安全な場所に移し終わるのには数年かかる。

周辺の環境が元に戻るためには数十年単位かかる。

今回の事故が環境にもたらした影響は、実は事故直後、数時間の間の影響が殆ど。放出された放射性物質の殆どはそのタイミングで放出されたもの。そして、その時に放出された物質が、3月15〜16日に降った雨と混じって降り注いだことで、地面が汚染された。

事故直後、アメリカのエネルギー庁が飛行機で放射線を調査した。

その際に調査されたのは主にセシウムの流出で、その汚染レベルはチェルノブイリと同等、地域によってはそれ以上の数値の箇所もあった。しかし、汚染区域の広さ自体は、チェルノブイリの10%ほど。

日本、アメリカ、フランス三国の間で、今回の事故が環境に及ぼす影響に対する解釈は概ね同じ。検出された数値に多少のズレはあるが、どういった対策が必要かという考えも、変わらない。

東京での被曝については、事故当日は空気が乾燥していたため、あまり影響はなかった。

しかし、3月20日頃、3日ほど雨が続いて放射線量が事故前の倍に。

具体的な数値としては、0.08マイクロシーベルト毎時前後。

参考までに、パリは自然放射だけで0.06 – 0.12 マイクロシーベルト毎時。

フランス Haute-Savoie地方では、平均で 0.21マイクロシーベルト毎時、最大で0.35マイクロシーベルト毎時に達することも。

東京の放射線量が、普段の倍まで高くなった日があるとは言え、その程度。世界には、さらに高い地域がある。

(上記図に関しては濃度が反映されていないように見えるのでIRSNに問い合わせ中)

食べ物への影響に関して

3月16日に日本政府は食べ物の安全基準を策定

EUは、日本から輸入する食べ物の規制値を、日本が新たに策定した値に合わせた。

世界には複数の基準値があって、それぞれ完全には一致していないが、特に問題となるほどの差は無い。いずれの場合も、基準策定の考え方は「子供の安全を守るために必要な基準」というポリシー。

今回の福島の事故により放出された放射性物質は複数種類あるが、半減期が8日のヨウ素に関しては、すでにその量が十分減っているので、その対策はもう考慮していない。

日本においては、観測の細かなルール決めは自治体が行っている。基準をオーバーした場合の対策も、自治体が責任を持って対応することになっている。

食べ物の汚染状況に関しても、環境汚染の調査と同様、IRSNでも独自に観測して、状況の推移を観測している。

牛乳、肉は、5月頭から、汚染レベルが検出不能なレベルにさがっている。

ほうれん草についても、放射性物質が検出されることがあるものの、基準値を下回っている。

きのこ、竹の子、茶葉については、基準値を超える値が検出されることがある。

きのこは、汚染物質を蓄積しやすい性質がある。

茶葉は、乾燥させる工程で汚染物質が付着・濃縮するため、放射線の値が高くなる。

汚染された海水は海流に乗って南下するが、東京湾近辺で「黒潮」によって流れが変えられ、東に向かっていく。東京より南まで汚染物質が流されることはまず無い。

海産物の中では、貝や甲殻類が基準値を超えることがある。

鮭や鮎など川魚からも検出されているが、これらは海で過ごすタイミングで、海底に蓄積された放射物質を吸収しているのではないかと考えられる。

質疑応答

Q. 今、東京で検出されてる放射線は何が原因ですか?

A. 今、検出されている放射線の原因となっているのはほぼセシウムで、半減期は2年。また、ストロンチウムの検出量が予想より少ないが、その原因ははっきり判明していない。

Q. 実際には放射線が検出されているのに、「検出されない」と公表されることがあるのはなぜか?

A. 公表されている数値は、「新たに増えた放射線の量」。なので、状況に変化が無い場合には、「新たな汚染は検出されていない」と発表される。

Q. 日本の政府の発表は信頼できるのか?

A. 日本政府の発表は透明性は少ないが、特に疑ってはいない。公表される値も、大まかなこちらの予想と大きく外れてはいない。ISRNで独自に行っている調査結果ともズレは無い。日本がもし嘘の発表をしたら、原子力安全保障の国際的なメカニズムの崩壊を招くことになり、日本政府がそんなリスクを取ることはできない。

Q. CTBTOの数値は公表されないのか?

A. CTBTOが行っているのは、地球上で大気内核実験が行われていないかをチェックするための調査で、その性質上、その調査結果は法律で機密扱いになっている。フランスではCEAの管轄下にあり、IRSNでも確認はできていない。ただし、法律上機密扱いにしなければいけなくなっているだけの話で、法整備に時間がかかっているが、あえて隠そうとしているわけではない。

Q. 子供に食べさせない方が良いもの、対策はあるか?

A. 特に問題となるものはない。しかし、潜在リスクを減らすために、できるだけ食べ物のバリエーションを増やした方がより安心。あえて言うなら、甲殻類やキノコなどは、放射性物質が濃縮する性質があるものなので、注意。チーズは、製造工程で濃縮された成分が取り除かれているので、牛乳より安全かもしれない。

Q. 根菜類は大丈夫か?

A. 放射性物質は、地表に落ち、土を通して野菜に取り込まれるというプロセスの間に薄まるため、根菜は特に問題無い。現時点では、ほぼ検出不能な値しか検出されない。また、チェルノブイリでは、野菜がセシウムを吸収するのを防ぐために、セシウムと形状の似たカリウムを大量に撒いて野菜に吸収させるといった対策を取った。恐らく、日本でも同じような対策が取られると思われる。

Q. 雪解けのタイミングで汚染が広がる可能性は?

A. 確かに川への影響がある可能性はある。川魚から検出されているのはそれが原因かもしれない。

Q. フランスで汚染された茶葉が見つかったがどう思うか?

A. 茶葉は、お茶を乾かす時に、屋外で広げて乾燥させるという工程がある。このタイミングで放射性物質が付着し、さらに乾燥を通じて濃縮したと思われる。そのため、グラムあたりの放射線量が高くなる。しかし、IRSNでその値を調べたが、4000リットル飲まないと1ミリシーベルトいかない程度だった。

Q. 基準値を決める際の根拠は?

A. 一日に食べる食べ物の10%が汚染されていると仮定して、1年の被曝量が1ミリシーベルトを越さないような値を算出する。

Q. 福島産の野菜は大丈夫?

A. 市場に出ている段階で基準値をクリアしているということなので、消費者が買える状態にあるなら、それは大丈夫だと考えている。

Q. 炉心溶融物(コリウム)はどういう状態にある?

A. 現状では確かなことは言い難い。分かっているのは、溶ける時に形が歪んでしまっているためて、きちんと冷やせていないということ。ただし、効率は良くないが、塊全体としての温度は下がっている。スリーマイル島の事故の際は、炉心溶融物の確認のために内部に戻れたのは事故から10年後。日本で何年かかるかはまだ分からないが、同じくらいかかるだろう。

Q. 水道水の安全性はどうなのか?なぜ時々しか検出されないのか?

A. 水の汚染は、水源が直接汚染されるケースと、川・用水路周辺の土から少しずつ漏れ出して汚染されるケースの2種類がある。

水源の直接的な汚染は、事故の最初期の段階がピークで、今は周辺に蓄積された放射性物質が少しずつ溶け込む形で汚染されていると考えられる。また、水道の濾過装置に放射性物質が蓄積するため、一時的に数値が高まる可能性もある。

Q. 燃料プールの崩壊のリスクは?

A. 原子炉はもうこれ以上悪化のしようがないレベル。燃料プールの方は、これ以上の悪化を防ぐために、補強工事が進んでいる。

もし、プール内の燃料が一気に反応した場合、周囲1キロ近辺は人が近づくことすらできなくなる可能性があったが、今は事故直後に比べだいぶ安定している。しかし、問題の根本的な解決には、貯蔵されている燃料を取り出す必要があり、それには1年以上かかる可能性もある。

Q. 各地でホットスポットが見付かっているが、子供が近付かない方がいい場所などはあるか?

A. 排水溝など水の通り道は、放射性物質が蓄積しやすいので注意した方がいいかもしれない。とはいえ、近づくのが危険なほどのレベルではなく、「1年間ずっとそこにいたら影響が出るかもしれない」程度なので、絶対に近づかない方が良い場所というのは特に無い。

Q. 食べ物の基準は、一つのサンプルで集荷した自治体全体の数値とみなしているが、濃度の違いがあるだろうから、そのやり方で本当にわかるのか?

そのやり方には透明性がかけているという点は否めない。

Q. お風呂は避けるべき?

特に問題はない。また、湖は放射性物質が蓄積しやすいので、機会があっても泳ぐのは避けた方が良い。

以上です。

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IRSN調査報告会 @ 在東京フランス大使館(7月7日):報告内容&質疑応答 への3件のフィードバック

  1. keity より:

    日本政府の発表は信頼できるか?

    A:A. 日本政府の発表は透明性は少ないが、特に疑ってはいない。公表される値も、大まかなこちらの予想と大きく外れてはいない。ISRNで独自に行っている調査結果ともズレは無い。日本がもし嘘の発表をしたら、原子力安全保障の国際的なメカニズムの崩壊を招くことになり、日本政府がそんなリスクを取ることはできない。

    しかし今日も牛から3400ベクレルのセシウムがでているのだけれど、これでもICPRは日本政府が言うことは信頼できる。としているのだろうか?検査でも洗った野菜、魚でも切り身の状態で骨や内臓を調べない方法でいいのだろうか?牛肉に関していえば、福島から他県に売った肉は、買われた県の産地とし出荷。
    どこで育とうが、どこのえさを食べようが、最後に出たところが産地名になる。しかも今では国産だけの所も多い。これで本当にいいのだろうか?原発をやめて欲しくないところの、調査のような気がしてならない。

  2. ジョージ より:

    記事にさせて頂きました。ありがとうございました。
    http://george743.blog39.fc2.com/blog-entry-591.html

  3. EX-SKF より:

    なるほど、CRIIRADがIRSNを非難していた訳が分かりました。

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