IRSN報告書(5月25日付)「福島第一原発事故による日本国内の陸地環境の放射能汚染について」


福島第一原発事故による日本国内の陸地環境の放射能汚染についての入手可能な情報の総括
2011年5月25日

原文:
http://www.irsn.fr/FR/Actualites_presse/Actualites/Documents/IRSN-NI_Fukushima-Consequences_environnement_Japon-25052011.pdf

IRSNでは、福島第一原発事故後、陸地環境の汚染に関係するデータを、定期的に収集、分析している。この総括は、最近入手した情報をまとめており、IRSN発行4月12日付情報ノートを更新するものである。海洋汚染についでは、2011年5月13日付の特定情報ノートに記載されている。

1.放射性物質の堆積についての認識

5月初旬、米国エネルギー省(US-DOEアメリカ合衆国エネルギー省 /NNSA国家核安全保障局)と日本の文部科学省は、共同で福島第一原発周辺の放射性セシウムの堆積マップ(面積に対してのセシウム134と137の活動を一平方メートル当たりベクレルBq/m2で表したもの)を発表した(図1)。これは、航空会社から得た放射線測定(飛行時間490時間)、地表測定、特にガンマ線の分光測定(136測定地点)の結果をもとにして作成されたものである。IRSNは、これらの調査結果の詳細は入手していない。

この地図によると、重要な放射性物質の堆積は、福島第一原発の北西、縦方向50km、横方向20kmの大きさの地域にある。この地域においては、セシウムの2つの放射性アイソトープの活動(総量において、Cs134,Cs137 の量はほぼ等しい)が、1平方メートル当たり60万ベクレル/平方メートル(Bq/m2)を超えており、最も強い放射性降下物を受けたこの地域の中心部では、3百万から3千万Bq/m2に達するとされる。これら、最も高い値(セシウム137、セシウム134が3百万Bq/m2以上)の堆積に、一部的にでも関係している自治体(町村)は次の通りである。

  • 双葉、大熊町、オビオカ(訳注:富岡の間違いか?)。3町とも町全体が原発から20km圏内
  • 浪江。かなりの部分が20km圏内
  • 飯舘、葛尾、南相馬、川俣(川俣はごく一部)。すべて原発から20km圏外

飯舘村のいくつかの地点で採取された土サンプルが測定されたが(広島大学、ACRO)その結果は、セシウムが80万から4百万Bq/m2で、DOE/NNSAおよび文科省共同作成の地図と一致している。

福島県の多数の地点で計測された空間線量が時間の経過に伴い、減少している点の説明としては、これらの多量の堆積は、福島第一原発から2011年3月15日、大体13時から23時の間の、放射性物質の放出によってできたのではないかと、IRSNでは考えている。これらの放出物は、北西に向かって拡散し、そこに雨と雪が、特に飯舘村に大量に降った(図2と3)。雨と雪によって、大気中の放射性粒子が洗い流され、堆積物となった。それはウェットなもので、放射性物質放出の時の乾燥した堆積物よりも、ずっと濃いものである(IRSNの2011年4月12日付情報ノート参照)。このウエットな堆積物は、一部、土壌にしみこみ、濃い汚染が残存している。このため、3月16日以降この地域で観測された空間線量が、大きな上昇を示したのである(図4参照)

原発80km周辺セシウム134+セシウム137蓄積図1-原発周辺80km圏内のセシウム134,137の累積堆積マップ

出典:www.mext.go.jp/english および http://blog.energy.gov/content/situation-japan

3月15,16日の福島での雨雪前線の展開図2-福島周辺地方における2011年3月15-16日の雨および雪前線の移り変わり

2011年3月15日から16日にかけての夜間の積算降雨量(左)と積算降雪量(右)の算定(フランス気象庁による、中央ヨーロッパの中期天気予想(CEPMMT)モデル出典のデータ)図3-2011年3月15日から16日にかけての夜間の積算降雨量(左)と積算降雪量(右)の算定(フランス気象庁による、中央ヨーロッパの中期天気予想(CEPMMT)モデル出典のデータ)

2.大気汚染と空間ガンマ放射

3月12日以降の放出物の大気中の拡散や、大気中の放射性物質粒子が地上に降下することによる堆積物の生成を検討するに当たり、IRSNが手にしているおもな資料は、日本国内の空間ガンマ放射の測定結果である。実際、大気の放射能汚染を直接計測した結果というものはほぼなく、主なものとしては、福島第一原発の南南西250kmにある、東京都新宿のエアゾール採取地点が挙げられる。

この結果から、最も大きな放出は3月12日から22日の間に起こり、首都圏を含む放射性物質放出の影響を受けた地域に、堆積したものと解釈できる。この時期、空気中のガンマ線(線量表記は、一時間当たりマイクロシーベルト μSv/h)測定点の大多数では、短期間(およそ数時間)でのピークが連続し、大気中放射のノイズフロアが高くなっていることを示している。これは、放射性堆積物が降り積もったためである(詳しくは、IRSNの4月12日付情報ノート参照)。

3月22日以降、現在でも、大気中への放出は続いていると思われるが、かなり低いレベルであるといえる(図4)。空気中のガンマ放射のピークはごく稀に観測されるのみで、空気中放射線の背景雑音も減少傾向にある。これは、短期で消滅する放射線核種(ヨウ素131、テルル132、ヨウ素132等)による放射線減少に対して、それを底上げするほどの放射線は3月末以降の放射性物質の降下物にはなかったことを示している。

福島県の複数自治体で計測された空間線量の推移図4-福島県の複数自治体で計測された空間線量の推移。空間放射量のレベルの違い(飯舘村と南会津ではほぼ100)は、放射性堆積物の量による。短期崩壊する放射性核種が時間と共に消滅するために、この計測期間中でも全体的に減少傾向にある。原発に北にある南相馬市では、線量の最初のピークはすでに3月12日に観測されているが、これは、一号機の最初の放出と符合している。この放出は、北へ広がった後、太平洋に出、日本の国土にはほとんど広がらなかった。

東京では、在日フランス大使館にIRSNが設置したTELERAY測定器を使って、3月18日以降空間線量を計測しているが、3月22日以降、継続して線量は下がり続け、0.08μSv/時以下と、相対的に低い線量になっている。4月‐5月には、揺幅の低いピークが何回か観測されたが、これは東京の空気の放射能汚染のわずかな変動と合致している(5月前半2週間では、空気中の放射性セシウム濃度は1mBq/m3(ミリベクレル/立方メートル)から数mBq/m3(ミリベクレル/立方メートル)以下の間で変動している)。

在日フランス大使館にIRSNが設置したTELERAY計測機による空間線量の推移(1ナノシーベルト/時間=0.001μSv/h)図5-在日フランス大使館にIRSNが設置したTELERAY計測機による空間線量の推移(1ナノシーベルト/時間=0.001μSv/h)

以上の事柄から、福島第一原発から放射性物質の放出は続いているが、重要視すべき量ではないとIRSNでは考えている。汚染食物摂取による内部被ばくの危険以外にも、外部被ばくの主なものとして、3月に生成された放射性堆積物によるものがある(下の§1参照)。4月12日付の情報ノートで、IRSNは、福島第一原発の北西、最も多量の放射性堆積物がある地域に1年間在住した場合の被ばく量の一回目の予想を出した。DOE/NNSAと文科省が4月から5月初旬に発表した放射性堆積物の新たなマップと空間線量は、中期的にこれらの地域に滞在した場合に、起こりうる被ばく量が相当のものであることを裏付けている(詳細は、5月23日付のIRSN情報ノート参照)。

3.農作物汚染の状況

3.1. 最も多量の放射性堆積物を受けた地域

原発から20km圏外では、農作物の検査が定期的に行われ、厚生労働省が結果を発表している。

全地域的にセシウム134とセシウム137が100万Bq/m2を超える地域(飯舘村、葛尾村、浪江町、浪江町は一部が20km圏外)において、農作物の検査結果の数が非常に少ない。日本全体では約3400の採取数に対し、この地域では33のみである。当初の1か月(3月中旬から4月中旬まで)は特にデータが不足している。最初の採取が、キノコは4月8日、肉は4月28日、ほうれん草は全く結果がない。山間部、山林部、つまり相対的に農業地帯ではないということが、これらのデータ不足の説明となりうる。

これらの地域では、「雑草」の検査結果は数多くある。その結果を発表している文科省によると、放射性物質効果によるこれらの植物の汚染は、葉物野菜のそれに近いと思われる。

図6と7は、これら3自治体で測定されたサンプル全体におけるヨウ素131および放射性セシウム(セシウム134、137)による汚染状況を示している。それによると、3月の「雑草」中のヨウ素、放射性セシウムによる汚染度は高い(数百万Bq/kg)ということである。セシウムによる汚染は4月中旬になっても同程度で、植物が成長するに従って徐々に低下し、5月中旬には1万Bq/kgにまで下がった。ヨウ素131による汚染は、放射線の減少により、早いうちから低下し、5月初旬で1000Bq/kg以下になっている。

この地域で測定された食物汚染は、キノコを除いて、概して低いようである。その要因として、検査対象となった植物の形(ブロッコリは、とりわけ濡れた状態では、大気中の残骸物を吸収しにくい)や、家畜のえさ(健全な飼い葉)によってはその産物(牛乳や肉)がほとんど汚染されない、ということが考えられる。

最も多くの放射性堆積物を受けた3市町村(飯舘村、葛尾村、浪江町)で3月20日以降採取された食品および野生植物におけるヨウ素131(生でBq/kg、牛乳はBq/L)濃度の推移

最も多くの放射性堆積物を受けた3市町村(飯舘村、葛尾村、浪江町)で3月20日以降採取された食品および野生植物におけるセシウム134+137(生でBq/kg、牛乳はBq/L)濃度の推移
図6+7-
最も多くの放射性堆積物を受けた3市町村(飯舘村、葛尾村、浪江町)で3月20日以降採取された食品および野生植物におけるヨウ素131および放射性セシウム(Cs134+Cs137)(生でBq/kg、牛乳はBq/L)濃度の推移。出典:日本の各省庁(雑草については文科省、その他については厚生労働省)。規定により、「不検出」は1Bq/Kgで表される。

3.2.監視体制の取られている県に関して

・野菜および植物性食物

日本の摂取制限値は、ヨウ素131が2000Bq/kg、セシウムがBq/kgだが、監視体制の取られている複数の県由来の野菜のほとんどにおいて、ヨウ素131およびセシウムによる汚染は現在この値を下回っている。例えば、3月18日に茨城県ひたちなか市、茨城県高萩市で採取されたホウレンソウのセシウム濃度は15020から54000Bq/kgであったのに対して、5月20日採取のものは、ヨウ素131もセシウムも不検出であった。図8の2つの表は、3月18日から5月19日の間に野菜で検出されたヨウ素131とセシウム濃度の推移を表している。任意の日に検査対象となった野菜の産地や種類によって、濃度の高低差に開きがあるが、ヨウ素131の濃度は明らかに減少傾向である。ヨウ素131は2カ月で1/1000に減少する。セシウム濃度はそれほど明確な減少ではないが、5月に行われた検査の直近の結果では、概して数十から数百Bq/kgを下回っている。

最も多くの放射性堆積物を受けた3市町村(飯舘村、葛尾村、浪江町)で3月20日以降採取された食品および野生植物におけるセシウム134+137(生でBq/kg、牛乳はBq/L)濃度の推移

3月18日から5月19日までに日本の野菜で検出されたヨウ素131および放射性セシウム(Cs134,Cs137)濃度の推移図8-3月18日から5月19日までに日本の野菜で検出されたヨウ素131および放射性セシウム(Cs134,Cs137)濃度の推移。出典:日本省庁(厚生労働省)

しかし、3月の放射性物質の降下が原因で(図9参照)、未だ汚染度の高い植物性食品がいくつかある。それは、

  • たけのこ:5月に福島県内で採取されたサンプルには、セシウム(CS134, Cs137)が数百から数千Bq/kg(原発の北、南相馬市のサンプルで3100Bq/kgを5/19計測)が見つかったが、ヨウ素131は不検出。
  • 茶葉:福島第一原発から300km近く離れた県を含めて複数の件で採取された生葉から、数百Bq/kg~場合によっては数千Bq/kgを超すセシウム汚染が検出された(例としては、東京の南に位置する神奈川県足柄市の5/12採取された葉から、3000Bq/kg)。ヨウ素131は、痕跡が検出されたことを除けば、これらのサンプルではほぼ皆無であった。
  • キノコ:福島県で5月に採取されたキノコ(しいたけ)の測定によると、セシウム(Cs134、Cs137) 濃度は、数百から1000Bq/kgを超えており(県北の相馬市の5/19測定のサンプルでは、1660Bq/kg)、ヨウ素131については5/10以降は不検出である。

キノコ、生茶葉、たけのこで測定された放射性セシウム(Cs134, Cs137) 濃度図9-キノコ、生茶葉、たけのこで測定された放射性セシウム(Cs134, Cs137) 濃度。出典:日本省庁(厚生労働省)

これらの食品については、日本の定めるセシウムの摂取制限値(500Bq/kg)を上回るものがあり、引き続き定期的な監視が必要とされる。これら生産物におけるセシウム汚染がかなりまだ残留していることについては、福島原発から未だ放射性物質放出が続いていることが原因なのではなく、3月の放射性物質降下があったが、これらの植物の放射線感受性がきわめて強いという生理的特徴のためである。

・食肉と牛乳 (訳者注意:以下の食肉に関するデータは5月25日時点公開のもの

一般的に、放射性物質の降下にさらされた複数の県由来の牛乳と肉の濃度レベルは相対的に低いものである。

福島県では、牛肉および豚肉の検査が数回行われ、ヨウ素131は不検出であった。南相馬市(5/9)と浪江町(5/12)の豚肉では、セシウムが生肉kgあたり52から260Bq。浪江町(5/10)と川俣町(5/11)の牛肉からは、より高い値が検出されたが、摂取制限値内であった(生肉kgあたり223から395Bq)。5月16日と20日の間、福島県内で採取された豚肉中のセシウム濃度は、生肉kgあたり3,4~270Bqであった 。

5月初旬から、生乳および乳製品ではヨウ素131もセシウムも不検出である。ただし、例外として、宮城県内(登米、大崎)に5/10採取されたもので、セシウム濃度が4および12Bq/L、飯舘村で5/17採取されたものでセシウム濃度が5bq/Lが挙げられる。

4.水面および飲料水の汚染状況

4.1 水面

文科省では、福島第一原発から36km北西にある飯舘村の池の水面を定期検査して、結果を公表している。3/18から5/1までの結果の経緯は図10に示されている。

水の表面で測定したセシウム134、セシウム137、ヨウ素131濃度の推移(飯舘村の池‐出典:文科省)図10-水の表面で測定したセシウム134、セシウム137、ヨウ素131濃度の推移(飯舘村の池‐出典:文科省)

この結果から、放射性物質減少によるヨウ素131の消滅の傾向が読みとれるが、セシウムについてはより不規則で、全体としては減少しつつあるが、とりわけ5月初旬におけるような濃度の上昇がみられる。雨天時の放射性堆積物が洗い流されることによる汚染が、この上昇の原因であるとみられる。

4.2飲料水

5月初旬以降、飲料水のヨウ素131およびセシウムに関しての検査結果は、概ね検査の検出限界値を下回っている。今月(訳注:5月)始め、茨城県、栃木県、東京都で採取された水道水の一部から検出されたが、その値は0,1から0,4Bq/Lであった。更に最近では、5/20に埼玉の飲料水で、0,44Bq/Lのセシウム濃度が検出された。いずれにせよ、日本が定める摂取制限値であるヨウ素131が300Bq/L、放射性セシウム200Bq/Lを大きく下回る微量なものである。


※ このレポートの翻訳はTwitterでの呼びかけに応えて頂いた読者の方によって行われ、当ブログ運営者が校正を行ったものです(全ての文責は当ブログ運営者にあります)。ご協力に改めて感謝いたします。また、他の読者の方からも広くご協力を受け付けています。ご興味のある方はこちらの記事をお読みください。


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