“原子力発電よ、さようなら”, シュピーゲル・オンライン6月30日記事全訳


2011年5月、数万人の市民が反原子力を訴えてベルリンの6月17日通りを行進する。

2011年5月、数万人の市民が反原子力を訴えてベルリンの6月17日通りを行進する。

出典:http://www.spiegel.de/politik/deutschland/0,1518,771403,00.html

2011年6月30日7時12分

10年間に渡る戦いの終焉―原子力発電よ、さようなら

大きな議論の的であった政治問題が終焉を迎えようとしている。ドイツ連邦議会(Bundestag)は、組織化された最初の原発反対運動から30年が経った今、脱原発を決定しようとしている。しかし、新たな問題も起こっている。

連邦議会の歴史的な時間―木曜、午前9時、議員達はドイツにおける原発の段階的な廃止について話し合う予定だ。その後、キリスト教民主同盟(CDU)、自由民主党(FDP)、ドイツ社会民主党(SPD)、緑の党で、めったに見られることのない各党の間での協調によって、ドイツ原発の運命を決定づけようとしている。

これは欧州でも他に類を見ない第一歩であり、30年以上続いたドイツでの原発反対運動の終わりを告げるものである。福島の大震災後、アンゲル・メルケル首相は、去年秋に彼女自身の連立政党が推し進めた、原子力発電所の稼動延長許可を取り消すことを決めた。

原子力エネルギー法(Atomgesetz)の改革案とともに、2022年までに核エネルギーの完全撤廃を法律で制定される。同時に送電網と再生可能エネルギーが拡大され、大幅な省エネルギーが実行される。

しかし段階的廃止の計画はエネルギー政策変更計画のほんの一部に過ぎない。

原子力発電の段階的廃止:2022年12月31日にドイツの最後の原子力発電所が送電網から外される。現在、オフラインとなっている8つの原発(訳注:福島での震災後すぐに、メルケル首相がシャットダウンするよう指示したもの)は、もう再稼動することはない。残りの9つの原発は2015年、2017年、2019年(各年に1ヶ所づつ)、2021年(3ヶ所)そして2022年(3ヶ所)までにオフラインとなる。

・さらに政府は、古い原子力発電所の1つを2013年の春まで待機状態にする(「待機予備力(cold-reserve)」)。しかし、今後2年間は、冬季にエネルギー不足が起こった場合には、主に従来の発電所を使用して埋め合わせをするであろう。連邦ネットワーク庁(Federal Network Agency)が不足分をどのように補うかを決定する。

再生可能エネルギーの拡大:長期的にはドイツのほぼ全ての電気が、太陽熱、風力、バイオマス、水力のような再生可能エネルギー源からのものとなるだろう。2020年までに(再生可能エネルギーの)割合は現在の17%から、その倍の35%まで増加し、その後、さらに増やす予定だ。これを実現するために、ドイツ政府は洋上風力発電 (wind  park) に大きく頼る計画であり、より重点的に補助金が出されるだろう。

・水力エネルギーや、地熱から電気を作る地熱エネルギーがより高い報酬率によってより多くの利益を生む。(訳注:ドイツでは、再生可能エネルギー発電所を建設すると送電網に送り出した電気のキロワット数に応じて助成金を受ける。そのため、作り出したエネルギーの市場価格よりも多く支払われることになる。)連邦環境省(Bundesumweltministerium)は、グリーンエネルギーへの補助金の捻出のために電力価格の上昇を予想しているが、価格は2030年までに大幅に下落することが予想される。

エネルギー産業に関する規定:計画された改革案には、送電網運用者の拡充計画を強化する条項も含む。消費者は電力供給者を変えようとする時、より多くの権利を持つようになる。また、エネルギーの生産と配給を切り離すことに関する条項も法律に含まれる。

何千kmもの送電網を新設:消費者に、より良いエネルギー配給を行うために、ドイツで高圧送電網が迅速に拡張される予定だ。送電線は全部で174万kmの長さになる。そのうち、エネルギーハイウェイ(Stromautobahnen)と呼ばれる高圧線が34,570kmを占める。ドイツエネルギー庁の試算によると、2020年までに3600kmが新設されなければならない。連邦送電網庁(Federal Grid Agency)が中心となり、この計画手順を進める。州にもこの件についての発言権を持たせる。

家屋改築の奨励:1995年までに建設された建物の改築に対する税制優遇措置が計画されている。計画された助成金の額は年間、税金収益からの約15億ユーロとなり、そのうち9億ユーロを州と市町村が負担しなければならない。

特殊ファンドエネルギー・気候ファンド(Energy- and Climate fund)」:原子力発電への承認がされなくなり、エネルギー供給者からのエネルギー・気候ファンドへの支払いが減少するだろう。そのため、2012年から、排出権取引からの全ての収入がこのファンドに支払われる。このファンドは、再生可能エネルギーおよびエネルギー効率を助成するのに使われる。しかし、このプログラムの具体的な内容については、後で、連邦予算についての協議がされる時に決定する。2013年から、エネルギーを大量に使用する産業は年間5億ユーロまで助成される可能性がある。

都市や市町村での気候保護:建築法規、計画法が簡素化される。将来的に、風力タービンやその他の発電所の地域指定がより簡単になる。さらに、建物にまたはその近くに太陽熱プラントを設置するのがより簡単になる。

洋上風力エネルギーの拡充:洋上風力エネルギーの拡充を加速するため、その承認を得るためのプロセスが簡素化される。政府は2030年までに、洋上風力発電パークから25,000メガワットを得る計画である。

自由民主党とキリスト教民主同盟(訳注:現政権を形成する政党)に加え、ドイツ社会民主党も原子力エネルギーの廃止を支持している。緑の党(訳注:環境保護を目的とした政党)も、先週末の特別党大会(special party conference)の際、賛成票を投じた。両党はエネルギー政策の転換に関する法律に対して、批判を表明した。彼らは新しい法律のいくつかに反対する意向だ。特に、自由民主党とキリスト教民主同盟の、再生可能エネルギーを2020年までに35%まで増やすという目標は低すぎると考え、45%にするよう要求している。

州側との問題

連邦議会の決定を受けて、連邦参議院(Bundesrat)は来週後半の7月8日に決定を下す予定だ。連邦参議院の同意は、ほとんどの新たな法律に必要ではないが、それでも調停委員会(Vermittlungsausschuss)を呼ぶことにより、立法手続きに遅れが生ずる可能性がある。家屋の改築への税による補助金に関する法律が、唯一の連邦参議院の同意を必要とする法律である。

すでに送電網拡張の計画は州の影響によって変更された。州政府は計画プロセスにおける参加権(Mitspracherecht)を要求したが、自由民主党とキリスト教民主同盟は、その州政府の懸念に対応した。自由民主党とキリスト教民主同盟の両党はもともと、連邦ネットワーク庁に、ドイツ全国の計画立案検証プロセスおよび計画立案承認を一方的に担当させる計画だったが、現在、それぞれの事例に対して、連邦参議院の承認を必要とする法規命令(Rechtsverordnung)を発行する。

発声投票の直前に、自由民主党とキリスト教民主同盟は陸上の風力エネルギーへの助成金に関する変更を無理に推し進めようとしたが、これは州を落胆させるものであった。9.02セント/kWhの報酬を、以前の計画では年間1%のみ下げる予定であったが、現在は1.5%下げる計画をしている。州はこれに対して反対を唱えた。また、改革プロジェクトに対する減税についても議論が起こっている。Berliner Zeitung紙の報告によると、予想されている15億ユーロの税金の損失を国が全て負担するように、という州側の要求を政府は拒絶した。

訴訟の波が襲いかかろうとしている

そのため、連邦参議院は、計画された全ての改革に承認をすることはなく、調停委員会を招集する可能性がある。しかし、連邦参議院はエネルギー政策の全般的な変更に大きく反対することはないであろう。

政策と発電会社の間の軋轢が、今後数年間、裁判所を忙しくしそうである。RWEとエーオン(訳注:ドイツの2大エネルギー会社)は先週、燃料棒税に対して、告訴した。三番目に影響力のある会社であるEnBWもまた、今のところ目立った動きはないが、今後、告訴する可能性がある。その決定は7月に下されるであろう。これらの会社はこの課税が不法であると考える。また、発電所の閉鎖による損害として、何十億ユーロもの請求をしている。

訳注:この記事に関連するスライドショー。1970年代から現在に至るまでのドイツでの原発反対運動の歴史的な写真を掲載。

ドイツ原発反対運動の歴史スライドショー:http://www.spiegel.de/fotostrecke/fotostrecke-69815.html

ゴルレーベンの核燃料再処理工場の建設予定地での反核村と警察との対立 (1980年6月4日付け記録写真)

ゴルレーベンの核燃料再処理工場の建設予定地での反核村と警察との対立 (1980年6月4日付け記録写真)


※ このレポートの翻訳はTwitterでの呼びかけに応えて頂いた読者の方によって行われ、当ブログ運営者が校正を行ったものです(全ての文責は当ブログ運営者にあります)。ご協力に改めて感謝いたします。また、他の読者の方からも広くご協力を受け付けています。ご興味のある方はこちらの記事をお読みください。


カテゴリー: 独メディア タグ: , , , , , , , , , , , , , パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中